パキスタン地震情報





 
 パキスタン地震、「食べ物がない」山岳地の救援難航

 【ムザファラバード(パキスタン北部)=川辺徹】パキスタン北部の地震で大きな被害を受けたカシミールで、都市から離れた山岳地帯への救援活動が難航している。

 国軍は道路の復旧作業とともに、ヘリコプターによる重傷者の搬送や食糧の投下を行うが、孤立した地域は数多く、本格的な支援が届くにはまだ時間がかかりそうだ。

 カシミールパキスタン側中心都市ムザファラバードでは、国軍や米軍などのヘリコプター約20機が患者の搬送などにあたっている。その発着場所で女性教諭(20)がはだしで座り込んでいた。15キロ北の村で倒壊した校舎の下敷きになり、手足を負傷、12日にヘリコプターで運ばれるまで、丸4日間、屋外で寝たまま過ごし、食べたのはりんご一つだけだったという。この女性教諭は「村には食べ物がない。食糧を運んであげて、とヘリコプターの中で兵士にお願いした」と憔悴(しょうすい)した様子で話した。

 がけ崩れで寸断された道路の復旧作業は、なかなか進展しない。ムザファラバードから東13キロの地点では、兵士が3交代で昼夜、作業を続けるが、現場は深い谷で道路は岩や土砂に覆われているうえ、完全に崩落しているところもある。

 作業現場の近くでは、その先の村に残された家族や親族に会おうと100人以上が野宿しながら開通を待つ。

 ハデム・フセインさん(62)は南部の中心都市カラチで仕事中に地震が起きたことを知り、帰宅しようと12日朝にここまでやってきた。家族9人の安否を確かめようと約50キロ先の自宅まで歩くつもりだ。

 同日夜、道路の向こうから同じ村のシャフィーク・カズニさん(35)が現れた。重傷を負ってヘリコプターでムザファラバードに運ばれた家族に会うため、村から12時間かけてやってきた。カズニさんによると、ビスケットなどの食糧が投下されたもののわずかで、村人は倒壊した家屋の台所付近を掘り起こして食べ物を探したりしてしのいでいるという。

 家族の安否を尋ねるフセインさんに、カズニさんは「長男と末の息子の2人が負傷している」と伝えた。フセインさんと別れ、ムザファラバードに向け歩き始めたカズニさんは別の人に「末の息子さんはすでに亡くなっている」と漏らした。心臓に持病を持つフセインさんが心配でどうしても言い出せなかったという。
(読売新聞) - 10月13日14時7分更新